二階堂黎人『地獄の奇術師』

二階堂黎人氏のデビュー作で「二階堂蘭子シリーズ」の第一作という「地獄の奇術師」を読んでの感想等。

ネタバレ有無両対応です。

女子高生探偵二階堂蘭子が活躍する推理小説「十字架屋敷」と呼ばれる実業家の邸宅にミイラのような男が出没した。

自らを「地獄の奇術師」と名乗り、復讐のためこの実業家一家を皆殺しにすると予告したのだ

作品紹介

キリスト教を深く信仰する一族の「十字架屋敷」と呼ばれる邸宅、その付近でミイラ男のような風貌の怪人が徘徊しているという噂があった。

二階堂蘭子たちの前に姿を現した怪人は「地獄の奇術師」と名乗り、屋敷の一族を皆殺しにすることを予告する。

厳重な警備の中、不可能と思われるような状況下で繰り返される殺人。

明かされる過去と一族の秘密、迫りくる怪人の影に蘭子が挑む

古風で暗い雰囲気漂う作品です。

感想

これからの蘭子の活躍に期待

「二階堂蘭子シリーズ」ということで、主人公である二階堂蘭子の探偵像がどのようなものであるのかというのが注目する点でした。

読み終えての印象は、まだキャラクターが固まっていない成長中の主人公といった感じ、蘭子はまだ高校生ということなので当然かもしれませんが。

また我が強く、癇に障るような性格も持ち合わせているので結構好みが分かれそう。

以降の作品でどのようなキャラになっていくのか楽しみです。

作品については、全体を通しての怪しい雰囲気や、ダークさ、グロテスクな表現など、世界観を楽しんで読めるものになっています。

謎解きは明快だと思います、伏線なども十分でフェアな印象が強いですし。でもやはりこれは物語を楽しむ作品ですかね。

Q: どこまでが「出題編」?

A:第十五章までと思います(個人的な感覚です)


以下はネタバレを含む内容になります。堪うることヲ得させんためニ、試みと共ニ勝つべき・・・

開く

推理の過程

まず、地獄の奇術師の正体について、初期の段階から怪人を演じる人間が二人いることは(実際は三人だったが)明らか。状況的には英希が怪しすぎる。

十字架屋敷で広美が襲われた事件は英希が犯人なら無問題(広美も共犯の可能性有りか)。というか、そうでなければ「秘密の通路」が必要になってくる。

ホテルでの密室殺人、これは本当にやりすぎで、状況的に万釣部が犯人である以外の推理が考え付かない。そのせいで、続く万釣部の密室での死も自殺をまず疑ってしまう。

結局フーダニットが明らかすぎて、かといってハウダニットが難解なわけでもないのであまり考える要素のない作品になっている。

徒然

本書を読むうえで結構不満だったのが、しょっちゅう出てくる他作品への言及と付随する注釈の多さです。マニアの人だと共感しながら楽しんだりできるのかもしれませんが、私は知らない名前が多くついていけず、未読の作品については些細なことでも求めていない情報は入れたくないので注釈は読まないようにしていました。そのせいで重要な情報を見落としたりもしたのですが。

特に許容できなかったのは警察という組織の役割がショボすぎること。まず、屋敷での広美襲撃の際の逃走経路、なんで警察が介入しているのにあとから抜け穴が出てくるのか。ホテルの密室のテープを使った方法も同様でこれも探偵が推理するような謎なの?と感じます。正直この手のトリックは読者からすると(よっぽど伏線が示されたりしていない限り)ピッキングして開けた、と言われているのと同じようなものではないでしょうか。舞台となる時代が少し古いので当時の捜査力はそれぐらいだったのかもしれませんが、本作では完全にただの密室の証人でしかなく、以降の作品でもあまり警察が信用できません。

蘭子の呼吸もなかなか掴みづらかったです。最初から怪しさ全開の友人に触れないのを疑問に思っていたら、突然に若干飛躍した推理を堂々と披露したり、途中描写なく密室の謎を解いてしまったり。作品の登場人物も私も、大分蘭子に振り回されたような感覚がありますね。それにしても、本当は彼女はどの段階で英希を疑っていたのか気になります。

私は「金田一少年の事件簿」が大好きなので、地獄の奇術師と聞いて<地獄の傀儡子>である彼を思い浮かべました。共通する部分も見受けられたりして、彼のモチーフだったりするんでしょうか?

英希の最期を含め、本作品ではオカルティックな色合いが強く、批判的な意見も見られます。個人的にはミステリ部分にまで干渉しなければ全然アリだと思いますし、最後の「神学的推理」も、正直本筋の推理劇より楽しめましたし面白かった。

私が「二階堂蘭子シリーズ」を読みはじめたのは、「人狼城の恐怖」を読んでみたいと思ったからでした。結構批判的なことを書いてきたけど読み物としては面白かったですし、作者が蘭子をどのように育てていくのかすごく気になります。

  

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