綾辻行人『奇面館の殺人』

「館シリーズ」九作目、「奇面館の殺人」の感想など。

ネタバレ有無両対応です。

シリーズのその他の作品についてはコチラ

季節外れの吹雪で孤立した館、奇面館。

主人影山逸史に招かれた六人の客はそれぞれの仮面を被らされた。前代未聞の異様な状況下で、事件は進展する。

主人の〈奇面の間〉に転がっていたのは、頭部と両手の指を切り落とされた凄惨な死体。

六人の仮面には鍵がかけられていた。名探偵・鹿谷門実の圧巻の推理が始まる!

作品紹介

「表情」を嫌う主人の館・奇面館、そこには毎年選ばれた人間が招かれる。

知人の代理人として奇面館に訪れることになった鹿谷。

「鍵の掛かる仮面」を付けて客人達は過ごさなければならない。

起きる惨劇、首と両手の指が切り取られた異様な死体。

吹雪により脱出できなくなる館。

互いの顔が見えない状況で繰り広げられる疑心と推理劇の果てに明かされる真実とは

超特殊な状況に心躍る作品です。

感想

鹿谷の活躍が見れる!

本作の特徴は何と言っても「登場人物の顔が仮面で見えない」という特殊すぎるシチュエーションでしょう。

これにより、様々な疑惑が頭から離れません、おまけに”吹雪の山荘”で彩られた舞台。

ミステリー好きには堪らない要素ではないでしょうか。

そんな謎だらけの事件を鹿谷が解き明かしていく。

最近影が薄くて、鹿谷の活躍を見たいと思っていたのですごく嬉しかったです。

真相としては不満な部分もありましたが、ロジカルもあったのでまあといったところ。

館の世界観や設定も凝っていて楽しめました。

次で最終巻というのが非常に寂しいです

ほしいけど、ほしくないモノ。

Q: どこまでが「出題編」?

A:第十一章までと思います(個人的な感覚です)


以下はネタバレを含む内容になります。未読の方は穴のない仮面をつけてどうぞ。

開く

推理の鍵探し

今回の事件で絶対にまず疑うのが入れ替わりトリックであろう。仮面によって隠された顔と死体の欠損が連想させるものは作中でも述べられた通り。

私が苦慮したのは密室の問題で、秘密の通路が存在しないという前提の下での推理である。その条件だと、犯人は別の場所で被害者を殺し、奇面の間へ運び込む際に邪魔な瞳子を電話で立ち去らせたという構造になりそうである。しかし、それだと奥の間への鍵が閉まっていたことの説明が必要になり、そこでトリックか館の構造(オートロックなど)、共犯者が必要になってきそうだった。

もし、秘密の通路を仮定するならば、瞳子への電話と被らされた仮面の理由などが問題となってくる。これを推し進めたのが鹿谷の推理である。

前者はハウダニットの、後者はワイダニットの問題となるのだろうが、私は当然のごとく前者の密室に喰いついていった。結局その理由は「面白そうだから」というだけなのだけれど、前作でもこのパターンで嵌ったような・・・いい加減学習するべきか。

賛辞と小言と

先に自分が不満だった点を挙げると、まずは当然秘密の通路の存在です。これは当てが外れた逆恨みもありますが、事件に深く関わるような場合は理不尽のない段階でそれを読者に明かすのが筋だと個人的には思いますし、これまでの作品も割とそうされてきたと感じるのですが(例外は迷路館とかでしょうか)。館の仕掛けなども想像でしか至れない部分が多いように思います。

また、全員が同姓同名であったというオチについて、これは正直あまり意義がわかりませんでした。人物紹介が無いことや館図などから違和感を感じて、すぐに気づいてしまう人も少なくないでしょうし、そうでなくても怪しさは全開です。自分が最初に考えついた”条件”も当然これでしたが、なかなか正解を明らかにしようとしないので、これは何かあるかもと期待していましたが捻りなし。気付かなかった人にとっても、あまり衝撃の少ない種明かしだったのではと思います。作者の軽い遊び心ぐらいで捉えるべきかな。

※追記:叙述トリックの種なのだから”意義”はありますね

残念だったのは殺人が一度しかなかったこと。せっかくの大舞台なのにもっと長引かせてもいいのよ(サイコパス)。

良かった点は、やはり島田の推理劇を見ることができたのが一番でしょうか。意外と見慣れない島田視点の進行は新鮮でしたし、一同を集めての推理ショーや犯人との攻防はまさに推理小説を読んでいる感じがして楽しかったです。

推理についても前述の不満や、”二代目”の存在がギリギリで明かされたことを除けば、ロジカルさも含んで事象に丁寧に意味付けしていく過程は気持ちいいものでした。「祈りの仮面」が鍵になっていたこととかスゴク良かったです。

また、エピローグでの島田と日向の会話でのちょっとした種明かしや、オカルティックな要素、特に別館の構造と「未来の仮面」の考察はすごく面白くていい味でした。

最終巻への期待

期待に応え続けるというのは途轍もなく難しいことだと思います。

数多くのファンがいるであろう館シリーズの最終巻ともなればどれだけの期待が寄せられているのか想像もつきません。

感動したりがっかりしたりしながら楽しんできたこのシリーズ、私としても綾辻氏には是非最終巻として納得のいくものを書き上げて頂きたいと心から願っています。

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コメント

  1. 名無し より:

    自分が伏線だと考えていた
    ・瞳子が死体の生首を見て、一度見た記憶がある
    というのは、どのように回収されたのでしょうか?
    自身では気付くことができず、教えて頂きたいです。

    • thanksorange より:

      コメント確認が不定期ですみません。
      私が読了してから時期を経ており該当部までのざっくりした読み直しでの回答で恐縮ですが
      十一章の2で語られている通り、「もともと被害者と顔立ちが似ていたミカエルを前日に瞳子が身分確認していたから」ということなのだとおもいます。
      ミカエルが被害者の兄弟かもしれないという可能性は想像の余地として残っているかと。