綾辻行人『時計館の殺人』

「館シリーズ」第五作、「時計館の殺人」を終えての感想等。

ネタバレ有無両対応です。

シリーズのその他の作品についてはコチラ

鎌倉の外れに建つ謎の館、時計館。

角島(つのじま)・十角館の惨劇を知る江南孝明(かわみなみたかあき)は、オカルト雑誌の“取材班”の一員としてこの館を訪れる。

館に棲むという少女の亡霊と接触した交霊会の夜、忽然と姿を消す美貌の霊能者。

閉ざされた館内ではそして、恐るべき殺人劇の幕が上がる!

※2019/1/30 人名の誤字を修正しました  大変遅れながら、ご指摘して頂いた方ありがとうございます

 作品紹介

オカルト雑誌の取材として「時計館」を訪れた江南らメンバー達。

亡くなった少女の亡霊が出るという館で彼らは過ごす。

閉ざされた館内で姿を消した霊能者。

繰り広げられる連続殺人。

一方、鹿谷は時計館の主人が遺した、「沈黙の女神」の詩の謎を追うことに。

館シリーズを代表する不朽の名作です。

感想

個人的シリーズ最高傑作!?

前作、前々作と捻りのきいた作品で楽しませてくれた館シリーズ。

でもやっぱり私は王道が、「いかにも」な推理小説が一番好き。

至る所に時計が溢れている時計館、亡霊の影、いわゆる「碑文の謎」。

考えるだけでワクワクが止まらない要素を詰め込んだ作品、本当にありがとうございます。

ミステリーとしても素晴らしかったの一言、伏線の張り方も凄まじい。

ラストの展開は本当に胸熱でした。

ネタバレなしだとロクなこと書けなくて申し訳ないのだけど、とにかく読んで損なし。

今のところシリーズで一番好きです、特に探偵読者にオススメかも。

早く次巻へ、時間がない!

Q: どこまでが「出題編」?

A:第十五章までと思います(個人的な感覚です)


以下はネタバレを含む内容になります。未読なら進んではいけない、時計の針は戻らないのですから。

開く

推理の歯車

・謎1(殺人について)

今回の推理でまず考えるべきは当然犯人が内か外かという点だろう。こういった場面でまず面白い方になびくのが私の定石である。ましてや今回は明快に平行する二つの舞台が整えられていたし、時計館というテーマから時差トリックの可能性は事件前から強く疑っていた(強く期待していたが正しいか)。

まず美琴の消失について、可能性が二つ。美琴は消えたのか消されたのかどちらだろう。この時点で一人二役のトリックを想像していた。つまり、これから美琴は地上で別の人間として行動しながら殺人を行うという筋書きである。そうならば、都合よく年齢の同じ人物がいるではないか、はやくも事件解決か?当然そう上手くはいかなかったが、この予想は割と的を射ていたことが後に分かる、だいぶ綾辻氏の呼吸がつかめてきたのかもしれない(慢心)。ただし、江南が偶然聞いた会話の内容的には後者も濃厚であった。

以後の事件はまとめて、旧館の扉を叩く音を鹿谷らが聞いたときに時差トリックを確信、伏線は充分、紗世子のイヤホンが盗聴器である可能性も考える。すぐに時差を確認しそれが4~5時間であることがわかった。以降、殺人が起きるたびに新館と照らし合わせて紗世子の犯行が濃厚に、一応福西と旧館の人物の共犯も考えたりもした。

結論、犯人は紗世子と美琴の共犯。美琴は全ての時計をずらし、その後振り子の部屋で落ち合うが紗世子は美琴も殺してしまう。あとは、島田らと行動しつつも殺人を繰り返すという流れ(QED)、めでたしめでたし・・・・・・というわけにはいかなかった。(今思えばやはり違和感なく時間をずらすのは相当無理そうだ、読んでいる時はできそうだと思っていたのだけど・・・)

終盤になって雲行きが怪しくなる、つまり瓜生と江南が襲われた事件と、ダメ押しの由季弥の死。最後だけはどうも時間が合わない、それに由季弥が死ぬ理由もわからない。むしろ彼は実は正気で最後まで生き残ると想像していたのに。もう一度うまく時計をずらしていたのだろうか。

もしもっと早い段階で無理に気づけていたならば、軌道修正し真相に辿り着けたはずだ。負け惜しみも言いたくなる程に、気づけなかった自分が悔しいのだ。

・謎2(沈黙の女神と過去について)

事件にばかり気を取られ

倫典の遺した詩、こういうの本当に大好き。時計塔の壁の説明がなされた時点で正直ラストの絵はほぼイメージできていた。時計塔が崩れることも、罪深き獣たちが塔の住人であろうことも。由季弥がそれに含まれるのかは疑問であったが。

もう一つ、過去の真実について。永遠が自殺した原因が別にありそうなことは回想から想像できる。知らせてはいけないことを四人は言ってしまった、とすれば考えられるのは時間。おそらく倫典は永遠に偽りの時間を与えていたのだろう。時計館という装置と具体的方法までは想像が至らなかったが。

ここまでわかっていながら、事件のトリックと結びつけられなかったのが本当に悔しい、伏線も沢山あったのに。一度構築した推理に固執してその他の部分へのアンテナが全く働いていなかった。きちんと全体を見渡して推理すればこれ以外ないといえるほどに美しい形が見えてくるではないか。

疑問点など

気になった点やツッコミなど、

  • 女性一人であれだけの殺人・作業を成し遂げるのは相当大変だったのではないか(紗世子無双)
  • 由季弥の存在や行動は少しノイズが強すぎるような
  • 体格から犯人を絞ることなどはできなかったのか
  • ちょっと隠し扉多すぎませんかね

他にも、江南が振り子の部屋へ行く瓜生を追いかけなかった判断は、個人的にはかなり許し難い。なぜ一人で行かせるのか。思考力も落ちていただろうし、また別の形で殺されていただけかもしれないが、あと二人助かっていた可能性もあるのでは。

そもそも現実的じゃないという意見もあるだろうが、私は気にならない。面白いものが至高であるし、現実的なものが美しいとも思わない。先に挙げた小事などこの作品の魅力の前では取るに足らない問題であろう。

なぜ最高傑作か

全シリーズを読み終えてもいないのに適当なこと言ってんじゃないよって感じですが、この作品は本当に最高でした。何よりも、私は館シリーズの主役は「館」だと思っています。今作では過去の物語も現在の事件も全てが時計館に繋がっていて、その崩壊とともに物語も幕を閉じる。整いすぎて惚れ惚れしてしまいます。そう、これは時計館の物語。

堂々と周到なミステリーを叩きつけてくれたのが今作。やりすぎなほどに伏線も手がかりも散りばめまくり。心の底から氏に感謝です。

沈黙の女神の詩と、それに沿ったラストシーンはもうミステリーの枠を超えた芸術作品といいたい。大胆で派手なトリックも好みドストライク。「金田一少年の事件簿」が大好きな私ですが、本作を読みながら両者に重なるものを感じました。

評判もかなり高めの作品のようで、ここがピークになってしまわないかという恐れも正直あるのですが、氏ならばきっと次巻以降も楽しませてくれると期待しています。

   

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コメント

  1. 名無し より:

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